東京土建一般労働組合　足立支部

　私のふるさとは、宮城県蔵王町の遠刈田温泉です。名前の通りの温泉街で、秋には観光バスが押し寄せ、町は熱気に包まれます。古くから「井戸を掘れば温泉が湧く」と言われるほど湯量が豊富で、熱めからぬるめまで、多彩な湯を楽しめるのが魅力です。中でも「あつ湯」は、誰が入れるのかと思うほどの高温。足を浸しただけで真っ赤に染まり、まるでゆでダコのようでした。一方の「ぬる湯」も決してぬるくはなく、そんな環境で育ったせいか、今でも少し熱めの湯が心地良く感じられます。

　中学校卒業後、岩手で大工の基礎を学び上京。高層ビル群や人の波、絶え間なく行き交う電車に圧倒されましたが、最も衝撃だったのは…水。水道水の匂いに違和感を覚え、天然水を買わなければならないことに驚きました。そして、現場では岩手と異なる材料や工法に戸惑い叱られ、技術を必死になって習得。今思えば、親方の拳骨は私を思ってのもの。先日、十数年ぶりに土台を刻んだ際も自然に手が動き、教えが生きていると実感しました。今は天国にいる親方に、心から感謝しています。
　さて、これを書いているのは、平和について考えるべき８月。私にとっても忘れられない夏の記憶があります。それは、昭和60年８月12日に起きた日航機墜落事故です。５２０人の尊い命が失われ、その中には私の叔父も含まれていました。上京して間もない頃、叔母に誘われ慰霊登山して以来、毎年の登山がルーティンになっています。今年は腰を痛めた叔母にビデオ通話を繋ぎ画面越しで一緒に登頂。花とビールを供えてきました。あれから40年。陰謀論なども囁かれていますが、真相は今も霧の中。ただ一つ言えるのは、同じ悲劇を二度と繰り返してはならないということです。
　ふるさとの雄大な自然、親方の教え、全てが私を形作り、今を支えくれています。そしてこの８月、空を仰ぐたびあの日の悲しみが思い出され誓います。平和の灯を絶対に絶やさない、と。

 

 

東京都足立区のホームページ